砂糖菓子よりも

精巧なまでに整った美しい顔、それに似合うすらりと陶器のように白く艶やかな肌に引き締った身体。

作り物であるかのように錯覚するくらい美しいその人は、全てが自然そのものでいじった部分は一つも無かった。

薄紅色に染まる唇、憂いを帯びたように細められ影を落とす人を惹きつけてやまない瞳。

高校生という歳に似合わぬ色気と年相応な無邪気さが相まって更に少女を美しく儚いものに見せた。


『ねえ。練習まだ終わんないの、大輝。付き合ってる彼女ほっといてさ』


そんな少女に目もくれず、ただバスケットゴールに目を向ける男。


「あともうちょっとだ」

『それさっきも聞いた』


少女、名前は不貞腐れたように日傘を持つ手を握り締めた。

太陽の光を生まれてから一度も浴びたことのないような真っ白い肌は彼女の努力の賜物であることが伺い知れる。


『…お腹すいた』


ぽつり、そう呟く。

それでも構ってくれる気配のない少年に、名前は更に不貞腐れ、器用に片手で傘をさしながら雑誌を読み始めた。

表表紙には、綺麗な化粧が施された名前の姿があった。

彼女はあのキセリョこと黄瀬涼太と同じく、今話題沸騰中のモデルである。

自分の特集ページをパラパラと捲り、注目の新人モデルのページに行き着く。

お人形さんのようだと世間で最近注目された後輩の姿を見る。

大きな瞳とぽってりと薄く色付く唇が彼女のチャームポイントだ。


「…何見てんだ?」


じ、っとそのページを見ていると不意に聞こえた声。

いつの間にか大輝が練習を終えていたらしい。


『この子、後輩なんだけど将来私の後釜かなって言われてるんだよね』


そう言いながら大輝にそのページを見せる。


「…乳が足りねぇ」

『そこじゃないでしょ』


大輝の反応は何というか、おっぱい星人そのものだった。

いや、薄々は気付いてたのだ、私が間違ってたことに。

はあ…、とため息を零す。


「……まあ、なんつーか、可愛いだけじゃ足りねぇってことだよ」


そんな私の横で大輝がぽつり。


『胸がでしょ?』

「そこじゃねぇよ。なんつーか、こんな作られたみたいじゃなくてさ…。だあっ、もう!名前の方が可愛いし綺麗だっつってんだよ!!」


言うだけ言って踵を返す大輝。

ずかずかと早足に歩く大輝の耳は赤い。

ああ、もうなんてこの彼氏は愛おしいのだろうか。

構ってくれないかと思うと身体の全て貪るように求めてきたり、こうやって時々口下手な大輝が嬉しいことを言ってくれる。

ほんとに可愛い彼氏様だ。


『まああんな砂糖菓子みたいに甘ったるいだけの子よりはマシか』


笑いながらそう呟いて大輝の背中に飛び付いた。


砂糖菓子よりも
―当然っちゃ当然よね


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